(一社)児島青年会議所2020年 理事長所信

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2020年理事長           片山 了介
勤務先      海洋建設(株)
生年月日     昭和56年3月9日

【はじめに】

 JCは、20~40歳までの品格ある青年経済人が集まり、明るい豊かな社会の実現に向けて運動する団体です。「明るい豊かな社会」とは、市民の誰もが望むものであり、地域経済や会社の求めるものも平たく言えばこのためでしょう。国内で最初に立ち上がったJCは、戦後間もないときに「新日本の再建は我々青年の仕事である」と明確に打ち出してそれを達成するための運動を行い、その後も各地に同士となるJCをつくり広げながら、この進化した社会を築くことの一翼を担ってこられました。
 ただ、今が完成ということではありません。そこに生活している人々も違うし、社会も新しいことを取り入れていく一方で、古くなったやり方は変えていかなければなりません。その時代にしか生まれない問題なども発生します。そういった環境変化に対応し、問題を解決しながら前進しなければならないのです。JCはそれらに絶えず適応し、自らも進化していけるように機会を与えられています。そして、ここで使われている「運動」とは、その人の考え方と行動を変えることです。私たちは勿論、地域の方々も一緒に明るい豊かな社会に向けて前進していきましょう。

【1.現状】

 児島JCは今どんな状態でしょうか。ここ数年では会員拡大に成功しているとは言いにくい状況で、実際に入会するメンバーよりも卒業していくメンバーの方が多く、メンバー数は過去最低レベルです。それは組織編成にも影響し、委員会や構成員の数も少なくなっています。その一方で、近年継続されている対外事業や外部交流事業は継続され、内部向けに行う研修事業は新しい目線での事業企画が実施されています。これは言い換えると会員一人ひとりの担いや負荷が増加傾向にあると言えます。負荷がかかりすぎていて、本業である仕事やプライベートにも少なからず影響が出てきているかもしれません。更に、メンバーの会費で予算の大部分を賄うので活動予算についても余裕はありません。
 児島という地域を見てみると、人口減少の波は目に見えるようになってきていて今は7万人を切ってしまう人口となりました。更に、少子高齢化の構図も合わせて顕在化しています。その原因や他の問題も複数あり、それらが重なって地域の社会経済、生活面なども影響を及ぼしています。
 傍から見ると、このように悲観的なことが多く感じるかもしれません。しかし、個人やその生活を中心にみるとそうではありません。地域は電気や水道などのライフラインは勿論、スーパーやお店など生活に困る環境ではありません。天候に恵まれた地域には変わりなく、近年起きた災害を忘れることはできませんが消防団や自治会などの組織もしっかりとあり、街の振興のための活動や、賑わいを創出するお祭りやイベントも他の地域と比べて多いと感じます。それだけのエネルギーがまだ十分にあるということです。
 児島JCにおいても、役割と負荷の多さの分だけ成長の機会を得られ、真面目で真剣に取り組む姿勢は極めて高いと感じます。活動面においてメンバーの参加率が100%になることもしばしば起こり、日本JC主催の諸会議においても半数を超え、各々がセミナーを受講し、貪欲に新しい知識や技能を取り入れようとしています。更には、この人数の中で2019年度岡山ブロック協議会の会長を輩出し、岡山県内の運動を一番に支えることにも取り組みました。また、出向者も少なくなく、その活動には拍車がかかるばかりです。

【2.戦略とビジョン】

 私は、今の児島JCメンバーの状態を踏まえた上で、今の現役メンバーだからこそできる組織体制と、戦略をもって運動の頻度や強度を高めて展開します。
 昨今SGDsという言葉をよく聞くようになったのではないでしょうか。日本JCでも全面的に推し進めている、世界でも注目を集める取り組みです。これは国連が定めた「持続可能な開発のための目標」であり、ほぼすべての分野を網羅し細かな目標は数百にもなります。大きな方向性として申し分なく児島JCでも2019年度より取り組み始めていますが、まだまだ身近な目標にはなっていません。
 ですが、あるセミナーでSGDsを実践されている企業講師から、「自分さえ良ければいい、自分の周りさえよければいい、自分の地域さえよければいい、をやめること」と教わりました。講師個人の解釈と補足されていましたが、個人で考えやすいと感じました。次につなげていくために、2020年度はもっと身近なものになるように、活動に際しては全体にこの言葉を傍らにおいて進めます。

【2-1.人財開発の分散 ~多様性を尊重し、全員で自己研鑽する組織~】

 JCとしての大きな柱に、人財開発と社会開発があります。人財開発は我々の資質や能力の向上を追求するもの。私は自身のJC歴の中で最も長く配属され携わったのはこの人財開発をメインにした研修系委員会であり、その考え方を無くしてはなりませんが、今のメンバーは研修意欲が高く吸収する力も強いので、内部運動として自己研鑽の役割をもつ専門委員会をつくらず、他の委員会に分散します。新規メンバーも入会当初から研修以外の個別の担いをもった委員会に配属し、社会開発などを進める現役メンバーの活動から直接学び成長する機会を多く作ります。

【2-2.組織と運営の新陳代謝 ~変化に適応する組織~】

 人数が少なくなりコンパクトな組織になることは、全員がしっかりと顔を見て活動できる組織でもあり、連携が取りやすくもあります。メンバーの成長機会とは、なにかに参加する機会も重要ですが、それよりも重要なのは企画、設営、反省などの運営機会のこと。2020年度は委員会を3つに分け、各々に対して外部の運動、内部の運動を企画するとともに、基本活動となる例会設営も各委員会で主管する形で進めます。担いは違いながらも設営においては競い合える部分をつくり、機会の質も高めます。
 そして、活動の核となる会議体の運営では議案がもとになりますが、その項目も日本JCでは研鑽を行い常に進化させています。2019年度岡山ブロック協議会に多数のメンバーが出向した経験を糧に、考え方や書式を一部取り入れて協議の質を高めます。
 今まで委員会として編成していた総務は団体を維持する上で必要不可欠ですが、運営室として縮小し、組織全体の下支えをする体制にします。

【2-3.地域共創 ~変化を起こせる、市民と新しいことを共に創っていく街~】

 社会開発として、JCが地域に運動を展開することは一人でも多くの市民のみなさまに、考えと行動を変えてもらうことを指します。例えば、魅力的なイベントであれば参加してみようかと行動は起きるかもしれませんが、それに目的やメッセージ性の強いものがなければその方の考えは変わらないでしょう。例えば、地域の財産として伝統などを守りつないでいくことは大切ですが、大義のみで内容や手法に工夫がなければ市民の行動を変えるに足るエネルギーにはなりにくいでしょう。JCは、地域を担う若い世代として、必ず地域のためになると信じて、恐れ多くも市民へインパクトのある事業を企画していかなければなりません。
 ここで団体としての強みを見直してみます。行政のような機関は職務の使命と責任があり、スケールも大きいが故にそのスピードは上がりにくく、調整も多方面に行う必要がありますので新しいことにもエネルギーがたくさん必要になります。JCは、失敗を前提に企画することはありえませんが、独立した団体としてチャレンジやその協力ができます。社会実験といった言い方で呼ばれることもありますが、地域が求めていることの先駆けとして取り組んだり、もしくは地元の先遣隊としてこれから求められるものを学び取り入れて根付かすことができるのです。
 2020年度に関して言えば、オリンピック・パラリンピックが東京で開催されます。日本が何年も掛けて掴んだこの平和とスポーツの祭典に、国民は大いに期待をしているところでしょう。地域として、一緒に協力や支援できること、選手たちを応援できることなど、今しかない盛り上がりに協力することも、それを地元の活性化や経済向上につなげられる一つの道かもしれません。
 この他にも地域のニーズや要望といった情報は市民にあり、情報の集まる行政や関係機関にあります。常にアンテナを張り、情報を求めるとともに、企画する事業に関係者から共感され、共感者から進んで連携を得られ、連携者から積極的な協力を得られ、市民から賛同を得られ参加してもらえるような街づくりを実施します。

【2-4.青少年育成 ~未来ある子ども達を素直に応援する街~】

 青少年は、地域の宝です。少子高齢社会となった今、子供たちにかかる期待は今まで以上に大きく膨らむばかりです。その子供たちの進む先は可能性に満ちあふれているものですし、もしその中で外の地域に憧れるものがいたら、それは止められるものではありません。児島出身者が各地各方面で活躍することはむしろ応援するべきものでしょう。
 そして、青少年は環境次第でいかようにも成長し更なる存在となりえます。今も情報化社会に対応できるように親世代では学ぶことのなかった知識が加わり、その代わりに教えられていないものもでてきているでしょう。
 子供をもつ若い親世代も、その成長に期待し、その環境には最も興味をもつことの一つでしょう。青少年を地域の宝というならば、その育成を学校や習い事などに任すだけでなく、地域も参画していかなければならないと考えます。実際に社会では、学校の授業では学びにくいものも重要になるのですから。社会に出てからでも学べるかもしれませんが、学生時代から地域社会に接し、社会のイメージや必要なことを地域から先に学ぶ環境があれば子供たちはより一層個性を伸ばすことを含めて社会人生活に興味を持つようになり、その行動にも変化が現れるでしょう。そして、それには感受性の高い乳幼児期や小学校よりも、中学校や高校、大学といった心身ともに成長し社会に近づいていく年代に対して提案実施していくことが、効果が高いと考えます。
 子供たちがどこかに行ってみたいといっても胸張って教えてやり、大手を振って素直に応援してやれる地域。そんな地域であれば、子供たちは新しく出会う仲間の育った環境の違いに気づき、地元を誇りに思える日が来るのではないでしょうか。そんな 街を次の世代は放っておかないだろうし、それができる地域には魅力的な大人がいる証拠。時代の先端をいくものも、生活の基礎を下支えするものも、仕事のやりがいや社会の楽しみを教えていける環境と、そのきっかけをつくります。

【2-5.交流拡大 ~参加してみたいと地域から求められる団体~】

 どんな運動を進めるにしても、多くの人から共感や協力を得ることで、大きな成果が得られます。我々の周囲には、地域行政、各種機関のようなところから自治会、地域団体、企業、居住地域や学校区などでたくさんのコミュニティがあります。対象者として参加いただくだけでなく、我々の運動は交流し、連携し、協働しなければ良い成果は得られませんし、そうしなければ独りよがりなものになってしまいます。まずはこれら地域のコミュニティに対して、常時交流と情報交換を行うことが大切な運動であり、それが後に仲間を増やすことにもつながっていくと考えます。
 私もその一人ですが2020年度、2021年度卒業見込みのメンバーは確かに多くJCとしての存続において危機感は持たなければなりません。が、今尚5年以上あるメンバーが1/3います。彼らは今一緒に活動を行い、経験値をどんどん上げていっているのです。今後、彼らが未来の児島JCを牽引するのは間違いなく、そのときには今のメンバー数で運営していることが間違いなく糧になります。
 近年企業の管理職や経営者層に対して各種セミナーや管理技術の講習、また地域貢献を目的としたボランティア活動も企画なども増えてきたと思います。が、いずれも作られたものに参加するものが多く、知識や技術を学んでも持って帰って変革を起こ すのは自身であり、それにはかなりのエネルギーがいります。JCの最も優れているところは、参加のみならず、みずから企画することにあると思います。そして、その企画は現状の課題を見据えた上で検討され、実施後も検証評価や次のステップの下地として引き継がれます。失敗はなく、すべて経験値として記録されていくのです。変革の起こし方はあまり教わる機会も経験もさせてもらえませんが、それができるJCはいつの時代でも青年経済人、若い世代には魅力的な先行投資の価値があると確信しています。
 働き方や会社組織の構造も変わり、創業者や経営者、管理職のみが身につけるものではなくなっています。今の社会に目覚ましいインパクトを与えていく社会人、特に女性やサラリーマンをどんどん歓迎します。

【2-6.広報とブランド化の加速 ~メンバー全員が理事長代理~】

 JCでも広報PRは欠かすことができません。会社経営でも地域振興においても、製品や技術サービス、施策制度は伝わらなければ意味をなさず、どんなに素晴らしい内容であったとしても、役に立つことなく自身が経験したのみとなってしまいます。情報化社会となってかなりの年月が経過し、そのツールも伝統的なやり方から最新式のものまで多様化し、受け取る側も大量の情報の中から取捨選択する時代になりました。が、我々はその技術に追いついているのでしょうか。
 一大産業として市場拡大したこの業界において、それに見合う費用を払えば強化はできますがそれにかける予算は残念ながらありません。が、過去これらがなかった時代、PRはうまくできなかったのでしょうか。自社の製品サービスを推進していくのに外部発注や委託をしないと仕事は取れなかったのでしょうか。内部でPRがまだまだできるのではないかと思います。広報発信や個々のPRの実践を会員一人ひとりに対して一年通して負荷し、会員一人ひとりが広告塔としてのレベルアップを図ります。

【2-7.倉敷市の振興】

 倉敷市内には倉敷JC、児島JC、玉島JCがあり、市内に3つあるのは極めて珍しいことです。会議体も運営し交流機会も多く、友情を深めながらも切磋琢磨する関係にあります。2019年度は合同事業も初めて行いましたが、SDGsの考えを一番実践できる環境にあるのはこの3JCではないでしょうか。各地域だけが良ければいい、と考えることなく全体が調和して倉敷市民憲章にあるような街を続けていくために我々は考え行動にうつして参ります。

【2-8.出向とライフバランス】

 JCは世界各国、そして日本各地にあり、交流できる機会が用意されていて、同じ志をもつ仲間と意気投合し、地元以外の仕事やネットワークの拡大など利用しようと思えばその道は開けていきます。また、一つの地域のみで進まないような運動や変革も日本JCを組織して展開し、政治や地方行政にも大きな影響を及ぼしてきましたが、その機会を「出向制度」として用意されています。出向やそこでの交流は入会と合わせて与えられる権利であり、私個人としては大いに応援します。
 が、忘れてはいけないことがあります。人間に与えられた時間は24時間で平等であることと、児島JCは明るい豊かな「児島」のためにあることです。時間を取れば取るほど実になるし個人の力となるでしょう。ただ、そうならば地域や児島JCに対してそれ以上の成果を上げなければ釣り合いは取れません。児島JCでもやれること、考えなければいけないことはたくさんあるのですから。本業である仕事、プライベートがある中で、いかに各自に課せられた担いや成長機会をこなした上で行うか、選択と優先に注意して取り組んでもらいたいと考えます。

【3.終わりに、次のビジョンへ】

 地域への運動継続や組織としての存続も重要ですが、2021年度には創立65周年、また岡山ブロック協議会のじゃがいも大会の主管対応が、更には2022年度には岡山ブロック大会の主管対応が予定されています。諸大会にも向けて、我々は走り続ける計画をつくり、実行していかなければなりません。

 スローガンとした「新陳代謝」は、奇しくも2019年度日本JC全国大会のテーマと同じになりましたが、組織も運動も環境に適応して新しく生まれ変わっていくことを常にイメージできるように掲げました。新しいことを取り入れるのみでなく、今までのことを縮小するのみでなく、つなげて変わっていくのです。そして、サブスローガンの「~日に新た、日に日に新たなり~」は、もとは中国古典の一節で、岡山県出身の実業家である土光敏夫先生が好まれた言葉からつけさせていただきました。「1日24時間はどんな人にも平等に与えられるものであり、同じ時間を与えられることはない。今日は昨日よりも、明日は今日よりも新しい歩みを前へ踏み出さなければならない」という戒めの言葉です。偉大な先人たちが心に留めたこの言葉を、念頭において活動に取り組んで参ります。

 JCは年齢制限があり一年で組織や役職が変わるため、例えば行政のように地域振興のために継続的に携わることがしにくい団体です。常駐職員ではないし、給料ももらいません。ここまで資質向上や社会貢献を、自らの時間を使い、自らお金を投資して活動する団体はないと思います。
 ここで行っている運動は、究極を突き詰めればJCがしなくても個人として行動を起こせばよいのかもしれません。が、考えただけでは始まらないし、一個人の意見が通るわけもなく、その考えも穴がいくつもあるような甘いものでしょう。だから、JCでは同士を集め、激しく議論しあって個人とその姿勢や考えを急激にレベルアップさせます。ときには理不尽なことも歯を食いしばりながら体験し、ときには懇親の場で楽しく語らい、常に意識を変革させて運動を続けていきます。そうやってきた先輩方の成果が、周囲からの信頼だと言い換えられるし、その経験をベースにして卒業後も個人が各方面で活躍されているのだと思います。
 自ら新陳代謝して、地域を新陳代謝できる団体になります。
  • スローガン
  • 情報開示
  • 定款
  • 倉敷市民憲章

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